変化するにちにち, 歌う

さすらい人の夜の歌(D768)

シューベルトのこの歌は、ゲーテの詩の題から来るイメージとはほど遠く静かだ。

去年買ったシューベルトの歌曲集でまず言葉に強く惹かれて聞いたら即、入り込んでしまった。

他者からの声であり、私の声でもあるかのよう、呼びかけられているようで、己に呼びかけているようでもある。

静かすぎて死の気配が漂う感じがする一方で穏やかである。受け入れた穏やかさだろうか。それとも音から来るのだろうか。

濃縮されて韻を踏む言葉と音。削ぎ落とされ普遍性を持つ言葉と音の融合に包まれる。

同じ題でD224もあるようだ。検索するとゲーテの詩では最も愛好者が多いとあったりする。ワタシはつい最近はじめて知った。

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Wandrers Nachtlied (さすらい人の夜の歌)

Über allen Gipfeln

Ist Ruh’,

In allen Wipfeln

Spürest du

Kaum einen Hauch ;

Die Vöglein schweigen im Walde .

Warte nur ! Balde

Ruhest du auch .

すべての峰に 

安らぎがある。  

すべての梢に 

風のそよぎは 

感じられない。

小鳥たちは森で静まっている。   

ただ待つがいい! やがて 

おまえにも安らぎがくる。

日本語訳:シューベルト歌曲選集2(教育芸術社)より