《墓までの歩》
《人を焼いて生まれる煙やがて雲にそうして雨になりて降り来よ》
《お参りにきている誰かと話したくて墓までの歩を母はよろこぶ》
《墓はすでに造花に変えしを今日母は庭のしらぎくいっぽん手折る》
《「墓まではもう歩けない」昨日言い今日はわすれて歩をのばします》
《手押し車で坂道を来て歌ってたYおばんの墓にも水を差しあぐ》
《「また私を叱りに来てね(まだおよば がいげしてくれ)」東京へ帰る私に母の挨拶》
******* 1,4首め改作、7首め削除
懐かしいYおばんは去年逝かれた。享年83。墓で出会うたびに手振り足振り(手押し車に腰掛けて)歌われたのが、〈♪♪♪あんた百までわしゃ九十九まで♪♪♪〉。アルトの太い、天地のつながった声!だった。昔からいい声だったらしい。
ちなみに、Yおばんのお姉さんが、帰るたびに手料理を持ってきてくださるお隣のMおばん。ご主人は母と同級生。同年といわず同級生と母は言う。