詠う(短歌)

短歌:「好日」’18年7月号より

       《墓までの歩》

《人を焼いて生まれる煙やがて雲にそうして雨になりて降り来よ》

《お参りにきている誰かと話したくて墓までの歩を母はよろこぶ》

《墓はすでに造花に変えしを今日母は庭のしらぎくいっぽん手折る》

《「墓まではもう歩けない」昨日言い今日はわすれて歩をのばします》

《手押し車で坂道を来て歌ってたYおばんの墓にも水を差しあぐ》

《「また私を叱りに来てね(まだおよば    がいげしてくれ)」東京へ帰る私に母の挨拶》

*******  1,4首め改作、7首め削除

懐かしいYおばんは去年逝かれた。享年83。墓で出会うたびに手振り足振り(手押し車に腰掛けて)歌われたのが、〈♪♪♪あんた百までわしゃ九十九まで♪♪♪〉。アルトの太い、天地のつながった声!だった。昔からいい声だったらしい。

ちなみに、Yおばんのお姉さんが、帰るたびに手料理を持ってきてくださるお隣のMおばん。ご主人は母と同級生。同年といわず同級生と母は言う。