白川静先生の漢字の世界

白川静先生の漢字の世界(2017年1月)

白川静先生のツイッター@sizukashirakawaからの抜粋です

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*日本からみると中国人は政治的人間であるというけれども、しかし日本人の方が政治的なものの欠如状態であってね。むしろ、そういうものを充足しなければならない。政治がなければ社会は有り得ないんだから。みんなが個人の中に籠もってしまったら、社会形成そのものが出来ない。

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*私はしばしば漢字学者として紹介される。しかし私の本心は東洋学者として紹介してほしい。

*身分の高い人はね、特に悪いことをよくやるからね、夢魔がやって来てそれで殺されることがある。この【夢】の中へ【死】という字が入るとね、【薨(こう)】ずる、となる。身分の高いほどそういう霊にタタられて色々悩む訳です。最後には大きないびきとともに死んでしまう。【薨】の音は大きないびき。

*人がはじめて霊的な感覚にめざめたとき、すべての自然物はみな霊的なものであった。「草木すら言問ふ」という時代であった。そのなかで別けても鳥は、霊的なものであった。典型的には、渡り鳥の生態が最も神秘に満ちたものであった。それは霊の来往を示すものと考えられたのである。

*殷の祖王である湯は有莘の国の聖者である伊尹の協力をえて国をおこした。伊尹は水浜の木、空桑の中から生まれたという神話を持つ。空桑説話はノアの箱舟のような洪水神話を背景とするもので、伊尹はその洪水を免れた神の子である。王朝のはじめには必ずこのような聖者の協力を必要とした。

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*衣を襲(つ)けることによって霊を受け、衣を改めることによって復活の儀礼とする俗は古代の中国にもあり、西周の金文に、戎(じゅう)の俘人になっていた百余名を奪還し、衣を改める儀礼を行なったことがみえる。

*【ゆるす】四段。【緩(ゆる)】と同根の語。束縛を加えている力を緩くして、自由に行動しうるようにすること。また束縛をゆるめて、相手の要求を聴き入れることをいう。聴許する意がある。

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*東アジアにおける古代歌謡の時代は、古代的氏族制の中核をなすものが外圧によって破壊され、新しい階級的関係に入るときに生まれた。[詩]や[万葉集]は、そのような意味をもつものとして、その比較的な分析の対象とすべきものであろう。*神のささやきは、おそるべきものであった。しかし人のささやきもまた、呪詛に似ておそるべきものがある。

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*はじめにことばがあり、ことばは神であった。しかしことばが神であったのは、人がことばによって神を発見し、神を作り出したからである。ことばが、その数十万年に及ぶ生活を通じて生み出した最も大きな遺産は、神話であった。

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*【歯】はもと象形。のち止声を加えて【歯】に作る。獣畜の類は歯によって年齢を知り得るので、年歯という。これを人に施していうときには【齢】という。

元日
*【ち(風)】激しく吹く風。風をまた【て】とも【ぜ】【し】ともいう。【東風(こち)】【疾風(はやて)】のほか【風】【山風(やまぜ)】【まぜ】【南島風(いなさ)】【嵐】などみなその系統の語である。【霊(ち・し・つ)】とも関係があり、それは自然の生命の息吹きそのものであると考えられた。

*【遊】という語のうちに、なにか異常なものという意味を含める用義法は、わが国の古代にもあった。貴人たちの行為がすべて【遊ばす】という動詞で表現されるのは、本来敬語法的な表現以上の意味をもつものであったからである。それはもと、神として行為すること、神としての状態にあることを意味した。