「ペコロスの母に会いに行く」, 変化するにちにち

「ペコロスの陽だまりの時間」あれこれ(5)

みつえさんの声が聞こえる。久々に聞く懐かしい声、お会いしたことがないのに聞こえる不思議。

玄関で息子を見送るみつえさんが、
「ゆーいちー」「いたっけーなー!」と手を振っている(11日東京新聞朝刊)。
「*いたっけーな→行ってらっしゃい(古い天草弁)」の註釈あり。

「いたっけーなー」、「いたっけーな!」、「いたっけーなー!」と微妙に違う。作者の岡野氏はいつもこのように何気ないところを変化させて、みつえさんの味を出してくれる。同じ言葉が出ているときは、わたしは間違い探しのようにわくわく違いを探してしまう。

眺めていると聞こえてくる声にじーんとする。わたしでさえこうだ、〈いわんやペコロスをや〉である。

わがふるさと阿久根でも同じように言う。「なー」は、ほとんど敬語として使う。同年代や年下などには「いたっけーねー」、親などに言うときには敬語で「いたっきやいなー」となる。実家付近は濁音がついて、「いだっけーねー」「いだっきやいなー」となる。今も若者以外は使っている(若者も使っているかも?)。
細かく言えば、「いたっ→行って、けー→来なさい、きやい→来てください」かと思う。

母をデイサービスに見送るときも「いだっきやいなー」と言っている。今度帰ったら、心を込めて声にしようと、今日のみつえさんの声を聞いて思う。