母とともに(介護帰省・鹿児島)

心置きなく去る

予定通りに帰ることにする。ヘルパーさんが九時には来てくださり、 体温も平熱で咳以外は特別に何もなし。食欲はあり過ぎるほど。

ちょっと寒くないですかとヘルパーさん、お年寄りがいらっしゃる所は、もうどこでもこたつを出していますよと。昨日までは昼間は夏のような暑さだったが、今朝は冷える。こたつをセットしたら途端ににっこりする母、寒かったのかも。

ヘルパーさんと一緒に見送ってくれて心置きなく去れる。

いもうとが、用事があるからと言って川内駅まで送ってくれる。
川内駅ふるさと館に前回まではあった薩摩蒸氣屋がない。ならば「ねったぼ」をと見回したが…無い、もう作らない(仕入れない?)という。「 芋きんつば」「ねったぼ」も買えず…。

帰りは京都で下りて先生にお会いしたいとは思いつつ、気力が残ってはいない、東京へ直行。

しまった! 月の光を体験しなかった!新幹線の車中から月が見える、満月に近い。夕方、毎日の散歩で母と月を見て楽しみにしていたのに。月夜は、20年近く前に伯母が亡くなって帰ったときに味わった、それ以降は思い出せない。

早稲田で降りる。何かすーっと入る気持ちのよいものが食べたい。蕎麦だ、蕎麦がき、あの店しかない。ビールも飲みたい。ガラガラと戸を開けて、閉め忘れ、他の客に注意され、すみませんと謝り席に落ち着く。蕎麦がき、素朴でもなく、身に馴染む味?わが身の一部分であるかように気持ちよくからだに入る?融けこむ?蕎麦がき、おいしい!

気持ちのよい食をいただいて、爽快感に満ちて夏目坂を上りはじめたはずが、キャリーバッグがだんだん重くなる、えっちらおっちら何とか上がりきる。

墓に行くときに「よいしょよいしょ」と声に出して上る母の身体は…、どれほどの大変さだろう、自分がきつくなって初めて思いが至るとは…なんとも…である。