スコットランドを詠う
◯名もあらぬ時刻表あらぬバス停にわが丈越ゆる石の在るのみ
◯日本に飛行機事故のありしことを部屋に告げ来る宿の主は (日航機御巣鷹山墜落事故) 歌集『潮は胸の辺まで』より
ハイランド地方のどこだったか覚えていない。グレンコー古戦場跡だったような気もするが。インヴァネスが気に入って45日滞在したのでその周辺だったかと思う。
目的地に着いた時に、帰りに乗る場所をバスの運転手さんに聞いた。答えは「the stone」と一言。石?私はちんぷんかんぷんでどの石?どこの?どんな石?などと色々しつこく聞いた。「大きい石、すぐ分かる、向こうにある」とでも教えてくれたのだろう。
今はどうか知らないが当時は「スコットランドにはバス停はないよ」「バス停には標識はないよ」(そんなバカな?今となってははっきりしないがこのどちらかだった)と誰かが言っていた。
帰る時間になって探したら、あった。大きい!巨大!やはりTHE STONE ! だ。でも石はあるがバス停の標識はなかった、が信じて待つこと一時間近く、それ以上?この「石」のある空間は特別で、当時5歳になったばかりの子は石によじ登っては飛び降りるということを飽かず繰り返していた。
そして無事にB&Bの宿に到着。御巣鷹山の日航機事故を教えてくれた主の宿である。そこには7歳のかわいい女の子がいて何回か外に一緒に遊びに行った。
驚いたことがあった。幼いのにすでに民族の誇りをしっかり持っている事。彼女が「I’m Scottish!」と言うのを何回か聞いたが、上から見下ろすように「スコティッシュ!」と言う表情に圧倒する様な何かがあると感じた。
もう一つはイングリッシュに対するスコティッシュとしての誇り、Rの発音が強烈な巻き舌だったことも鮮明な記憶。もう35歳を過ぎているだろうか。あの Inverness のかわいい誇り高きお嬢さん!彼女は今回の住民投票ではどちらを選択するのだろうか。