変化するにちにち

スコットランド(3)最北端ジョンオグローツ(John O’Groats)

独立賛否を問う住民投票日

ここにも4,5日滞在したと思う。チェスターに住んでいたのでそこから周遊券を買っての二週間の旅行だった。子どもはどこまで行っても1ポンドだけ。八月だったが冬用のジャッケットを着てそれでも寒く村の暖炉ではピートを燃やしていた。寒いと言うと「寒くても晴れているだけマシだ」と村のおばさんが言っていた。

海が澄んでいる、砂浜はずっと先の方まで白一色の世界。不思議に思い降りて行くと、粉々になった貝殻で砂ではない、打ち上げられた貝が波に揉まれ何十年何百年の間に砂のようになったのだろうか。手に取って何度も何度もその感触を味わった。

海に沿って草地を、寝転がったりしながら、何時間もゆっくり歩いた。昼間は暑いくらいで半袖になって子は草と遊んだ。薊(あざみ)の花がきれいだった。鹿児島でもよく見る花なので懐かしい、しかしここの薊は独特で気候のせいか背が高くきりりと引き締まりその棘に気迫さえある感じであった。またスコットランドの国花であることを知れば、背の高い茎と花冠が海の煌めきと太陽を浴びて気高く美しかった。何といってもスコットランドの歴史を背負う花だ。

当時わたしは岐路に立ち、重いものを抱え込んでいた。決意した事を誰にも言わず、留学を口実に子を連れて東京を逃れるようにして英国に行った。

今思えば、旅行したその土地その土地の美しさ印象は、明暗綯い交ぜの精神状態のどうしようもなさと相俟ってひときわ輝き身体に染み入るまでだったのだろう。東京でも冬、たまにあるしんとした寒い日には身体が覚えているのか英国にいるような感覚になる。良くも悪くも今はかなり薄れたが。

スコットランドでの二週間、特にハイランド地方は旅行者われに心地好く好天と人に恵まれて鮮烈な印象を残した。