詠う(短歌)

短歌:2022-2《息》

  息を呼(は)き息を吸う身体 わたくしのものにはあらぬものが支える

賜物のような空気を身体にとりこめば言葉、歌声となる

息を呼(は)き息を吸いして生きているからだは母というもの恋し

目の前の家は静かだこの家に住んでいたのは母だったから

立ち止まることはしないが歩はきっとゆっくりだろう家の前を過ぐ

一旦は吐き出した息をもういちど吸う不自然に、マスクに慣れるな

見えぬものの一つは空気 身体に入り来て思惟に交じりつつ躍る

好日 2022年2月号より

順を入れ替えて、一部は改作してあります。

☆☆☆