詠う(短歌)

短歌:「好日」2024-10より

じいさまが来る//

海神(わだつみ)の海の不可思議 そを成せるひとつにあらむ戦没者たち

八月は杖をつきながらじいさまが称名朗朗と先ずやって来る

夕つ日の海の「あの子」に手を合わせ祖父はなかなか顔を上げない

じいさまの庭より見える夕つ日の光るわだつみ音あらぬ海

この先にある道標(みちしるべ)はっきりと見えないものは安らぎでもある

「猛暑より酷暑よりひどい八月のそれだったらね鬼の暑さよ」(山本雅子)

「五輪はね平和の象徴なんだって、先生が言ってたよ、お父さん」
(高野公彦氏を真似た一首です)

『好日』2024年10月号より
改作してあります