詠う(短歌)

短歌:2022-11 「秋の音」

これだけの本があるのに欲しいのはたった一冊 目が回りそう

地下駅の長い階段上り来て地上あたらしほんものの風

夕暮れの楠(くす)をそよがす風生(あ)れてごはんだよぉぉ呼ばるる心地

地に足をつける暮らしであるような錯覚よけれ包丁を研ぐ

包丁を研げば生まれるささやかなササザザザササ 秋が来ている

俎を洗う歌詠みし人を思う「使わなかった裏」洗いつつ

「好日」2022年11月号より

改作、順の入れ替えをしております。