詠う(短歌)

短歌:好日2021年10月号より

 帰心切切//

戦没者墓苑へつづく葉桜のツクツクボウシヨクキタヨクキタ //

葉桜の蝉は祖父母の声となる戦没者墓苑にわたしが行く日 //

八月のむいかここのかすぎさって風たちはじむ帰心切切 //

「戦没者」からだに届いてこないから立ったり座ったり痒くなったり //

伯父が沈んでいるだろう海とつながって海水浴は皮膚がいやがる //

うなばらの夕日の下の海底の戦艦にいるはず、じいさまは拝む //

・・・・・

生きている実感があるなぜならば涙止まらず鼻呼吸できず //