「お腹を輪切りにして、そこに言葉を入れて…」。これを、家で練習しながら思ったりする。上江法明先生が亡くなって2年、バリトンオペラ歌手で〈合唱団さわらび〉の指揮者だった先生の言葉だ。
輪切りにした〈おなか〉は静かな波紋をもつ池、あ、抜弁天の竜だ。家で歌の練習をしていたら突如、竜の〈しっぽ〉があり、輪切りにしたお腹が池に見えた。
思うのではなく〈見える〉、身体のマッピングだ。抜弁天の竜は、尻尾が池の中まで垂れている。尻尾が言葉になり、息になる。輪切りにするということは、言葉を意識する、重心を下にというのは勿論だろうけど、身体は立体だ、後ろに大きな空間ができる。
このあいだ抜弁天に行ったこと、上江先生にお会いしたこと、つながり(縁)の不思議感覚も身体の栄養となる。このような新しい気づきが喜び、エネルギーになることを内田樹がうまく表現していたが、どの本だったか……。