詠う(短歌)

短歌:2018-11《潮風匂う》

《戦死した子がいた祖母の盂蘭盆の精進汁を今年も作る》

《「台湾沖に沈んだというが兄さんは如何なる死に方したのだろうか」》

《「台湾沖い/沈んだついどん/あんさんな/いげな死ん方/したっじゃろがい」》

《千鳥ヶ淵戦没者墓苑の黒色の蚊に刺されたり傷跡となる》

《盆明けを彼岸へ帰りゆく人の「音なひ」ならん大楠そよぐ》

《漸くがようやくであるかしばらくであるかを見つむしばらく見つむ》

《川内より〈おれんじ鉄道〉阿久根までしおかぜ匂う無人駅六つ》

<好日>2018年11月号より

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一首目、「精進の出汁」を精進汁に直す。

2首目、誌上でのルビは今読むと分かりにくいので、方言だけにして2首並べることにした。母が繰り返す無念の思いをそのまま残しておきたい。

五首目、「無人駅六つしおかぜ匂う」→「しおかぜ匂う無人駅六つ」にした。これですこし客観性が出ると思うのだけど?