短歌:好日2021年5月号より
自粛禍// 自粛下の地上に薄きひさかたのひかり見上げて命断ちしか// この時期に自死した人の原因はコロナ禍でなく自粛禍だろう// 閉ざされて自粛というは風船に似ている針で刺そう 出かける// 面会のできぬ理由を理解し… もっと読む 短歌:好日2021年5月号より
自粛禍// 自粛下の地上に薄きひさかたのひかり見上げて命断ちしか// この時期に自死した人の原因はコロナ禍でなく自粛禍だろう// 閉ざされて自粛というは風船に似ている針で刺そう 出かける// 面会のできぬ理由を理解し… もっと読む 短歌:好日2021年5月号より
自粛禍// 「 生きていく以外が生きていくために必要 」寺の掲示板語る// 「 静粛にいま皆さんは粛々と補償なきまま自粛する時 」// 「 会場の皆さんどうか粛清に! 失言でした静粛にです 」// 自らを粛(つつし)… もっと読む 短歌:好日2021年4月号より
《 はみ出す色 》 // とりあえずここで一旦立ち止まり毒出すように息吐いてみる // 世の中がコロナ一色になる時をはみ出す色の美しからむ // 明日もしも「感染者数」が増えたなら文庫本は家に置いて出かける // 新しい… もっと読む 短歌:好日2021年3月号より
《故郷》// 「故郷とは思い出である」声ふかき姜尚中氏一人を生かしき// 2020年帰れぬ心ふるさとと呼ばず故郷(こきょう)の思いがなじむ// はつか澱む身を浄化するものとして朝あたら… もっと読む 短歌:「好日」2021年2月号より
淡青(たんじょう)// 夢に見る背の羽出(い)だし海に沿い水平飛行す母のもとまで// 両手もてまず片足をゆっくりと撫でつつ今日の身を目覚めさす// 内臓まで秋刀魚を食らう君の腑でプラスチックが舞っているかも//… もっと読む 短歌:好日2021年1月号より
《時不利兮騅不逝》// 淡青(たんじょう)の四角い皿の一点の染みを見ている義父逝きし朝// 上海で二週間の隔離有るという「時に利あらずして騅(スイ)逝かず」// 感染をしても覚悟はあるけれど感染させる私でもある// 悲し… もっと読む 短歌:好日2020年12月号より
海 // 戦死した息子のことをじいさんが「海軍さん」と呼ぶのはなぜか// じいさまは「海軍さん」の前に座し経読みいます音吐朗朗// 戦死した人たちの骨はすでに溶けて海である海そのものである// 日の沈む海に向かってじいさ… もっと読む 短歌:好日2020年11月号より
《 一行 》 2020年八月六日朝刊の一面に見えず広島のこと // コロナ禍で面会できない一行を忘れては苦しむ母かもしれず // 上を向いて歩こう涙こぼれてもいいから上を向いて歩こう // 八月を目… もっと読む 短歌:好日2020年10月号より
《 括弧(かっこ)を外す 》 一枚といえども異物マスクしていったん吐いた息を吸い込む// 歌舞伎町でもし働いているとしたら、「夜の街」から「」(かっこ)を外す// むりやりに押しつけられたマスクにはあらねど愛しき空気を隔… もっと読む 短歌:好日2020年9月号より
この春を死無型転無憂医流水(シンガタコロナウイルス)と書きて「自粛」を私より消す// 「面会の禁止」つづけど夏帽子かぶれば母と語らう心地す// さまざまの形のマスク生まれるは「まだ生きたい」という意思表示// 信号を待… もっと読む 短歌:2020-8マスクを外す