詠う(短歌)

短歌「好日」2025年12月号より

⬆️ まだ残る葉

現身うるわし//

阿難陀(アーナンダ)よ泣くな」と諭す釈迦の声 諸行は無常 事象移ろう//

なにを急ぐ必要あろう昨夜(よべ)すでに母は亡くなったというではないか//

まだ息をしているような百あまり生き来し母の現身(うつしみ)うるわし//

九月尽かあさんが逝った明くる朝の雨はれあがり静しみわたる//

母が名のトキ朱鷺色の彼岸花二〇二五年まっかに咲いた//

後手(うしろで)に何処へ行くのか振り向かずふりむかぬ母もうそれでいい//

とぎれとぎれに合掌していたかあさんをとぎれとぎれに吾(あ)は思い出す//

改作、改行してあります

冒頭の一首は、死期が近づいている釈迦を思い、泣いている若き弟子アーナンダを諭す釈迦を詠んだものです。

中村元著『原始仏典』を繰り返し読んで、母の死に際しては動ぜず静かに見送ろうと言い聞かせて来た10年でした。

好日には載っていませんが拙くても捨てがたく、投稿しました。