詠う(短歌)

短歌:好日2020年3月号より

 《音なふ》//

兄弟がひとり足りない不可思議の空間残る兄の三回忌//

行き先の天空橋という駅のその先の先 虹たつところ//

大切な人の声とはなつかしき過去形ならず今を「音なふ」//

初春の光のもとで開く本の青色のインク「恵存」古ぶ//

やや重き万年筆にかたち良き文字なぞりつつ息がととのう//

古びたるガス台が持つ蛍火のささやかにしてものを焦がさず//

・・・・・(5首目を改作)