詠う(短歌)

短歌:<好日>2019年3月号より

《虚(うろ)》

《「さびしさの果て南国ぞ旅ゆく」の母の誤読をおりおり思う》

29日のわが生日を祖父祖母の命日が前後して包み込む》

《名を変えてみたくもあれど名づけおや祖父を思いて一穂(いっすい)点す》

《頭上なる真青き虚を天と呼ぶか空(そら)と呼ぶかで歴史が変わる?》

・・・・・

一首目は母の思い出としてなんとか読みたかったが表現が・・・わかるけど・・・

高校生の時どういうわけか、〈幾山河越えさり行かば・・・〉の色紙が掛けてあった。母は〈寂しさの果て南国ぞ・・・〉と読んでいた。人生そのもの、いい歌だとも言った。何回も聞いた気がするがよく覚えていない。

高校生の教科書にこの一首が載っていて先生が解説をした。〈・・・・・さびしさのはてなむ国ぞ・・・〉この先生は嘘を言っている、とわたしは思ってしまった。母の〈南国〉が絶対に正しいのだと疑いもしなかった。それだけならまだしも、嘘を教えていると先生にショックを受けた。今は笑えるけど。

日曜日、山吹に夕陽が差している。