変化するにちにち, 詠う(短歌)

兄の短歌

法要は終わったが今日が長兄の実際の四九日。去年11月、母の介護でわたしが実家に帰っていたとき、〈明日は父の月命日だから〉と母にお経をあげるようにと電話して来た。「阿弥陀経はなんかい(長いよ)」と母が面倒くさがったこととともに思い出す。

ここ2,3年、短歌も詠みはじめて、たまにメールで批評をお願いされた。遠慮なしの批評にもめげずに続け、はじめの歌謡曲調も少しずつ良くなっていった。手元にあるのは10首に満たない、拙い(人のことは言えないけど)歌だけど、兄が生きた証に。

5首目の「夢間」は広辞苑にも無い。でも違和感がなく意味も通じる。何よりも兄が言いたかったことだろうと思い、題にしてこのまま残すことにした。

          夢間に走る                    花田直人
《 明けてなお変わらぬ夢に友として先ずは一歩を癌細胞と 》
《 山並みを墨絵に染めて月明かり古道をふたりわが影と行く 》
《 有難い人生だったと手を合わし九十三の母が振り返る 》
《 風にさえ触れ得ぬ今は病棟で梅咲く野辺の匂い恋しき 》
《 生き甲斐を絶たれて今はマラソンを夢間に走る病床に伏し 》