変化するにちにち

S先生とのひととき

声楽のレッスンを受けに、月に一度、ATTの呼吸法の仲間3,4人で駅で待ち合わせして先生のお宅へ行く。玄関を開けると別世界、広くはないが質素で趣味の良いアンティークの家具、物のある部屋が心地好い!本も多い。

哲学的、芸術的、美しいS先生
先生は哲学者のような、画家のような人。絵になる美しさとそれに勝る知性、というだけでは済まされないものが滴る。言葉の節々に熱が籠る。そして純粋。

言葉に深く下りていく
先生は言葉に深く下りていく、戻って来るのが大変なのではと案じてしまうほどどこまでも行く。作曲家、詩人のエピソードなどにとどまらず作品の広い背景を語ってくださる。大学生が高い?授業料を払って聞くところを、私たちは、おいしいお茶もいただきながら笑いあって聞ける。なんという贅沢!

わたし以外はみな音大出身の人たち、彼女たちのたっぷりとした上質の歌声も聴く事ができる至福の時である。冬に暖炉を囲んでいるようなゆっくりした時間の中で、順番に歌って4時間近く異空間に浸れる。懸命に練習していかなければ濃い時間がもったいない。先生は静かに、情熱をもって教えてくださる。すごい先生に出会ったものだ。

「いい出会いも特技の一つ」とは、もうお分かりですね、師と仰ぐ「樹くん」の言葉です。

故郷の母は、「ありがたい人生だった」と過去形で繰り返す。そして私も晩年には、「幸せな人生だった」と言うに違いない(繰り返したくはないですけどね)。